秩父の食文化を語る上で、いまや世界的な熱狂を生んでいる美酒の存在を外すことはできない。肥土伊知郎氏が2004年に立ち上げた株式会社ベンチャーウイスキーが手掛ける「イチローズモルト」だ。
大手メーカーが撤退するなか、祖父の代から続く羽生蒸溜所の原酒を守り抜き、秩父の地に新たな蒸溜所を構えた肥土氏。夏は暑く冬は極寒という寒暖差の激しい盆地気候、そして清らかな秩父の伏流水が、ウイスキーの熟成に奇跡的な恩恵をもたらした。
ミズナラ樽のオリエンタルな芳香と重層的なピート香は、世界的な品評会「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」で幾度も頂点に輝いた。市内のバーや飲食店では、この幻の美酒を地元の肴とともに味わう贅沢が日常として存在する。