この場所を語る上で、映画史に残る伝説的なアクションシーンを避けて通ることはできない。鬼才クエンティン・タランティーノ監督がこの店を訪れ、その圧倒的な立体構造と江戸情緒漂う内装に一目惚れしたエピソードはあまりにも有名だ。
2003年公開の映画『キル・ビル (Kill Bill)』において、ユマ・サーマン演じる主人公ザ・ブライドと青葉屋の構成員たち、そしてルーシー・リュー扮するオーレン石井が繰り広げた伝説の死闘。その舞台となった料亭「青葉屋」は、まさにこの空間を忠実に再現したセットだった。撮影自体はスタジオで行われたものの、吹き抜けを囲む2階の手すり、太い梁、中庭を思わせる1階の広間など、空間のDNAは完全にこの館そのものだ。
近年、Netflixなどのストリーミングサービスを通じてクラシック映画やカルト的人気作に触れた若い世代やインバウンド旅行者が、この「聖地巡礼 (フィルムツーリズム)」の地として連日押し寄せている。スクリーン越しに観たあの熱気と美学を自らの五感で追体験する興奮が、ここには今なお生々しく息づいている。