現場の第一線で活躍する現役アナウンサーや番組ディレクターへの取材によると、生放送でニュースキャスターが吹き出すツボに入る現象には、単なる「おかしさ」を超えた生理的・心理的トラップが存在します。テレビやラジオの生放送という特殊な環境下では、日常会話とは比較にならないレベルの認知的負荷がかかっているためです。
最大の要因は、心理学で言う「緊張と緩和の落差」です。秒単位のキューシートに追われ、一言の言い間違いも許されない極度の緊張状態(カタストロフィー・プレッシャー)にある時、脳はわずかな刺激に対しても過敏に反応します。この状態で、プロンプター(原稿表示装置)の突飛な誤植、スタジオの床でスタッフが盛大につまずく音、あるいは隣のアシスタントアナウンサーの微妙な声の裏返りといった些細なズレが視覚・聴覚に入ると、張り詰めていた緊張が一気に弾け、自律神経の防衛反応として笑いが噴出してしまうのです。
さらに、心理学における「皮肉課程理論(白熊効果)」も強く作用します。「絶対に笑ってはいけない」と強く自己規制をかければかけるほど、脳の監視プロセスが「笑い」に関連する情報や感情を無意識に探索し、結果として笑いを増幅させてしまう現象です。生放送で笑いをこらえる理由を意識すればするほど、喉が収縮し、呼吸が浅くなり、最終的に嗚咽のような笑い声となって漏れ出してしまうのが、この現象の恐ろしいメカニズムです。