「譲位とは」何を意味し、どのような法的根拠によって実現したのか。その核心には、2017年に成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の存在がある。現行の皇室典範第4条は崩御による継承のみを規定しており、生前退位の手続きを欠いていた。皇室典範そのものを恒久的に改正すれば、将来の天皇が意に反して退位を強いられる「強制退位」のリスクが生じかねない。そうした法制上の懸念を拭い去るため、政府は上皇明仁一代に限った特別法という選択肢をとったのだ。
この緻密な法整備こそが、社会の混乱を避けつつ静かなる令和改元を可能にした最大の要因である。宮内庁公式ウェブサイトには、当時の即位礼正殿の儀や退位の礼に関する記録が克明に記されている。歴史・法制度解説の観点からも、この特例法の手法は日本の立憲主義と皇室伝統が高度に調和した稀有な事例として刻まれている。