下腹部に皮膚が余って揺れている状態は、正式には「プライモーディアルポーチ(Primordial Pouch=原始的な袋)」、通称「ルーズスキン」と呼ばれます。これはトラやライオンなどの大型ネコ科動物にも見られる特徴で、家猫においても野生時代の名残として受け継がれている正常な身体的特徴です。
猫のお腹がタプタプする理由には、過酷な自然界を生き抜くための主に3つの合理的な役割が存在します。
第1に、「外敵の攻撃から内臓を守るクッション機能」です。猫同士の激しい喧嘩では、後ろ足で連続して蹴り上げる「キック攻撃」が繰り出されます。急所である腹部に皮膚のたるみと適度な脂肪の層があることで、敵の鋭い爪や牙が筋肉や内臓へ直接到達する致命傷を防ぐ防具の役割を果たしています。
第2に、「激しい運動時の柔軟性と可動域の確保」です。猫は獲物を追う際、背中を大きく弓なりに曲げて体を極限まで伸縮させ、全速力で疾走します。皮膚に十分なゆとりがなければ、後肢を大きく伸ばした際に皮膚がつっぱり、俊敏なダッシュや高いジャンプが制限されてしまいます。
第3に、「砂漠時代に培われた一時的な食料の貯蓄スペース」という説です。野生時代、常に獲物にありつけるとは限らなかった猫は、一度の狩りで食べられるだけ胃袋に詰め込む必要がありました。胃が大きく膨らんでも圧迫感を受けないよう、腹部の皮膚があらかじめ伸びやすい構造になっていると分析されています。
アメリカンショートヘアやベンガル、エジプシャンマウなどの品種では特にルーズスキンが発達しやすい傾向にありますが、雑種を含めどんな猫にも現れる自然な特徴です。