サザンオールスターズの紅白史において、最高峰のハイライトとして語り継がれているのが2018年(第69回)の出演です。デビュー40周年を迎えたサザンは、紅組・白組の枠を超えた「特別企画」として、実に35年ぶりにNHKホールのステージへ直接降臨しました。
1曲目の『希望の轍』で会場の空気を一変させると、続く『勝手にシンドバッド』でステージは前代未聞のカオスへと突入します。桑田佳祐のシャウトとともに、審査員や全出演者がステージ上に押し寄せる中、同じく特別企画で出演していた松任谷由実(ユーミン)が桑田の元へと歩み寄りました。
桑田が「ユーミンだ!」と叫んで腰をくねらせながら絡み合うと、ユーミンが桑田の頬にキスをし、桑田もユーミンの肩を抱いて胸元に顔を寄せるという、台本に一切存在しないアドリブの連続が展開されたのです。さらに後ろでは、特別枠で出演していた北島三郎が満面の笑みで手拍子を送り、司会の内村光良や広瀬すず、櫻井翔までもが我を忘れて踊り狂う光景が全国へ生中継されました。
当時のラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』などで語られた舞台裏によると、この共演は綿密に計算された演出ではなく、ステージ上の圧倒的なグルーヴが生み出した本物の偶発的セッションでした。日本のポップス界の頂点に君臨し続けながらも、公の場で交わることの少なかった2つの巨星が、昭和・平成の音楽史を総括するかのように抱き合ったこの数分間は、紅白歌合戦の歴史を「勝ち負けの競い合い」から「音楽への祝福」へと完全に昇華させた瞬間でした。