軍のトップを目指す冷徹な野心家でありながら、親友の死に涙し、部下を命がけで守るロイ・マスタング。この複雑怪奇な男の魅力を立体化したのは、まさに三木の洗練された演技だった。指を鳴らす音とともに放たれる焔の描写に、彼の声が重なる瞬間の高揚感は異常だ。
特に親友ヒューズの葬儀における「雨が降ってきたな」という名セリフ。悲しみを押し殺した低いトーンの奥に滲む慟哭は、声優業界でも語り草となる屈指の名シーンである。感情を爆発させるのではなく、あえて押し殺すことで表現する悲壮美。これこそが、彼が演じたマスタング大佐を伝説たらしめた理由だ。