チープ・トリックの真の恐ろしさは、従来のスタンドバトルにおける鉄則をすべて無効化する点にある。通常、スタンドは本体の精神エネルギーが具現化したものであり、本体が倒れればスタンドも消滅する。しかしチープ・トリックは、最初の本体である乙雅三が死亡しても消滅せず、新たな宿主へ乗り移ることで自立して存在し続けた。
物理的な破壊が不可能であり、宿主の自殺願望や無力感を餌にして増殖する概念的な呪い。唯一の弱点と呼べるものは「宿主から離れた瞬間に独立した一個の霊的存在として認識される」という点だけであった。だからこそ、物理攻撃を無効化する小道の怪異によってのみ処刑が可能だったのだ。この裏設定とも言える冷酷なルール設計が、作品全体に漂うリアリズムと底知れぬ不気味さを支えている。