なぜ渋沢栄一だったのか。彼は「論語と算盤」を掲げ、道徳と経済の両立を説いた人物だ。バブル崩壊以降、失われた30年を経験し、閉塞感に包まれる日本において、彼の思想は単なる歴史上の遺物ではない。政府が彼を紙幣の顔に据えた背景には、起業家精神の再興と、持続可能な資本主義への回帰という強いメッセージが込められている。
約500もの企業や社会事業の立ち上げに関わった渋沢の功績は、投資や新産業の創出を促したい現代の政策とも合致する。貯蓄から投資へというスローガンが叫ばれる中、彼の肖像は日々、国民に対して「お金を動かせ」と無言のプレッシャーを与えているかのようだ。