びわ湖大花火大会を語る上で避けて通れないのが、湖岸道路沿いに設置される巨大な「目隠しフェンス(遮蔽シート)」の存在です。ネット上やSNSでは「湖が見えない」「地元住民への配慮に欠ける商業主義だ」といった批判的な声が散見され、地元自治会の一部から開催反対の決議が出された経緯もあります。
しかし、運営関係者や警察当局への取材を通じて見えてくるのは、単なる有料席誘導にとどまらない切実な危機管理上の課題です。
最大の設置理由は、歩道や車道上における「滞留型群衆事故(将棋倒し・過密ドミノ)の完全防止」にあります。韓国・梨泰院での雑踏事故以降、全国の大規模イベントでは群衆雪崩の防止が最重要課題となりました。かつてのびわ湖花火大会では、無料で見ようとする数十万人の観客が狭い歩道や車道に滞留し、緊急車両の通行すら困難になる危険水域に達していました。フェンスによって「立ち止まっても見えない環境」を物理的に作ることで、人の流れを強制的に循環させる設計が採られています。
さらに、警備員や警察官の人件費・設営費が年々高騰しており、安全な警備体制を維持するためには有料観覧席の比率を高めて警備原資を確保せざるを得ないという財政構造の現実があります。2026年現在では、地元住民向けの先行枠や地域還元施策が段階的に整備されつつあるものの、無料の自由観覧エリアが大幅に縮小している現実は変わりません。現地へ足を運ぶ際は、「ふらっと行って琵琶湖のほとりで観る」というスタイルはもはや通用しない前提で計画を立てる必要があります。