経済的な格差が明白であるにもかかわらず、なぜあえて昇進しない理由を自ら選び取る会社員が増えているのでしょうか。大手転職サービスやコミュニティでの現場取材、SNS上での投稿から、働く個人の赤裸々なインサイトが浮かび上がってきます。
都内のIT関連企業に勤務する30代後半の男性社員は、取材に対して次のように胸中を明かしました。
「課長に昇進した先輩たちが、毎晩22時過ぎまでトラブル対応や上層部への報告資料作りに追われ、休日もチャットツールの通知に怯えている姿を間近で見てきました。それでいて管理職手当は月5万円程度。残業代が出なくなるため、時給換算すると平社員時代より下がっているのが公然の秘密でした。『責任だけ背負わされて心身を壊すくらいなら、定時で帰れる平社員のまま副業で月10万円稼いだほうが精神的にも金銭的にも豊かだ』と判断したのです」
こうした生の告白に表れているように、出世を避ける最大の要因は「報酬と責任の不均衡」にあります。いわゆる「名ばかり管理職」に対する警戒感や、プレイングマネジャーとして現場業務と部下育成の板挟みになる過酷な負担が、若手や中堅層の出世意欲を削いでいます。
整理すると、平社員のメリットとデメリットには明確なトレードオフが存在します。
【平社員でいるメリット】
- 労働時間に対する正当な対価:所定労働時間を超えた分は残業代が全額支給される。
- 精神的ストレスの限定:部下の不始末に対する監督責任や、部門全体の業績目標未達の重圧を直接背負わない。
- プライベートの可処分時間:有給休暇の取得が比較的容易で、終業後や休日に仕事から完全に意識を切り離しやすい。
【平社員でいるデメリット】
- 収入の頭打ち:基本給の上限に達すると、業績連動賞与の変動以外で大幅な年収アップが見込めない。
- 意思決定の裁量権の欠如:組織の方針や業務プロセスの決定に関与できず、上流からの指示に従う受動的な業務が続く。
- 社内での居場所の狭まり:年齢が上がるにつれて周囲から「昇進できなかった人材」という無言の視線に晒される。