「荷物を運ぶだけの簡単な案件です」「書類の受け取り、日当10万円確約」。SNSのX(旧Twitter)やInstagram、求人掲示板に並ぶ甘い言葉の数々が、多くの若者を破滅へと誘う入り口となっています。これらはすべて、強盗や特殊詐欺の「受け子」「出し子」「叩き(強盗実行役)」を調達するための巧妙な罠です。
刑事裁判の法廷で被告人となった元実行役の青年が語った手記には、その戦慄のプロセスが生々しく綴られています。
「最初の応募時は、ただの引っ越し手伝いや書類運搬だと思っていました。しかし、連絡先をTelegramに移行させられた直後、『適性審査と身元確認のため』と運転免許証の両面写真、実家の住所、家族構成、勤務先、さらにはスマートフォンの顔認証用動画を送信させられたのです。指定された現場へ向かうと、送られてきた指示書には『住宅の窓を割って侵入し、現金を奪え。騒ぐ家人はバールで殴打して縛れ』と書かれていました。怖くなって断ろうとすると、指示役から即座にメッセージが届いたのです。『お前の家族の住所は割れている。逃げたら実家に火をつけるぞ。妹がどうなってもいいのか』と。」(法廷での被告人供述調書より要約引用)
一度個人情報を差し出してしまえば、そこから自発的に抜け出すことは極めて困難になります。指示役にとって、実行役は警察に逮捕されても痛くも痒くもない「使い捨ての道具」に過ぎません。現場で現行犯逮捕され、懲役刑や損害賠償という重い現実を背負うのは、すべて末端の実行役に押し付けられるのです。