名盤キャラバンサライ(アルバム)の録音現場となったサンフランシスコのスタジオでは、常軌を逸した実験が繰り返されていた。冒頭を飾る「永遠なるキャラバン」の導入部で聴こえる虫の鳴き声は、サンラファエルの森でフィールドレコーディングされた生音をテープループ処理したものだ。深夜から早朝にかけて行われたセッションでは、照明を極限まで落とし、言葉による会話を禁じてインプロビゼーションのみで意思疎通を図る過酷なテイクが14時間以上も続けられたという。
そして現在、ソニー・ミュージックエンタテインメントが主導するアーカイヴ修復プロジェクトによって、長年門外不出とされてきたオリジナルのマルチトラックマスターテープが発掘され、最先端の空間オーディオ技術を用いた最新リマスター動向が大きな注目を集めている。2026年に向けたこの試みでは、これまでミックスの奥底に埋もれていたパーカッションの微細なタッチや、未公開となっていた別テイクのソロパートが鮮明に蘇り、名盤の知られざる立体的な音響設計が白日の下に晒されようとしている。