『忘れられないの』が放つ心地よさは、緻密に計算されたコード進行とベースラインに裏打ちされています。楽曲の屋台骨となっているのは、都会的な憂いを帯びたメジャーセブンスコード(M7)を多用したハーモニーです。
浮遊感のあるテンションコードを基調としながら、サビに向けて滑らかに感情が高揚していく進行は、まさに黄金期のシティポップが持っていた洗練そのものです。これに草刈愛美による躍動感あふれるベースラインと、江島啓一のタイトなドラミングが絡み合うことで、単なるレトロ趣味ではない、フロアを揺らすモダンなグルーヴが形成されています。
電子音と生演奏の境界線を溶かし込み、隙間の美学を追求したアレンジメントは、サカナクションが長年培ってきたクラブミュージックの知見が見事に昇華された結果と言えます。