誤嚥性肺炎の死亡率はなぜ高いのか?余命と最期の兆候、看取りの現実

誤嚥性肺炎の死亡率はなぜ高いのか?余命と最期の兆候、看取りの現実

誤嚥性肺炎の死亡率はなぜ高いのか?余命と最期の兆候、看取りの現実についての真相をご紹介します。

急性期病院において誤嚥性肺炎と診断された場合、その治療過程は長期化と機能低下の連続となります。全国のDPC(診断群分類別包括評価)データによると、誤嚥性肺炎の入院期間は平均して約25日から35日程度を要しており、通常の市中肺炎(平均10〜14日前後)と比較して倍以上の入院日数が費やされています。

この長期入院の背景にあるのが、治療と廃用症候群の激しい板挟みです。肺炎の急性期には気道内への食物流入を防ぐために絶食措置が取られますが、高齢者の場合、誤嚥性肺炎に伴う絶食の予後は極めて深刻です。わずか1週間の絶食と床上安静により、下肢や体幹の筋肉だけでなく、咽頭を挙上させる喉頭挙上筋群(舌骨上筋群・舌骨下筋群)が10%以上も萎縮します。その結果、「肺炎は治癒したものの、自力で唾液を飲み込む力すら完全に失われ、経口摂取を再開した途端に再誤嚥を起こす」という絶望的なサイクルに陥るのです。

病棟の臨床記録が証明するように、誤嚥性肺炎の再発による死亡リスクは発症回数に比例して指数関数的に増大します。発症回数と病態ステージごとの客観的な臨床データを以下の比較表にまとめました。

病態ステージ臨床指標・平均入院日数30日〜1年の死亡リスク編集部の見解・現場のリアル初回発症期
(急性期初発)・入院期間:約18〜25日
・絶食期間:平均3〜7日
・CRP値:高値(10mg/dL前後)・30日死亡率:約8〜12%
・1年後死亡率:約20〜25%抗生剤治療で炎症は軽快しやすいが、筋力低下により退院時のADL(日常生活動作)低下が顕著に現れる。再発期
(2〜3回目)・入院期間:約30〜45日超
・嚥下筋の著しい廃用萎縮
・不顕性誤嚥の常態化・30日死亡率:約20〜30%
・1年後死亡率:約40〜55%退院後2〜3ヶ月以内の早期再燃が頻発。耐性菌の出現リスクが高まり、薬剤選択肢が狭まる危険水域。終末期移行期
(頻回再発・難治性)・入院長期化または施設看取り
・重度栄養障害・低アルブミン
・嚥下反射の完全な消失・30日死亡率:約40〜60%
・1年生存率:極めて希薄(<15%)積極的治癒を目指す段階から、苦痛緩和を中心とした緩和ケア・看取り方針への合意形成が迫られる。看取り・終末期
(身体機能停止期)・全身倦怠、傾眠の常態化
・輸液制限(溢水予防)
・経口摂取の自然停止・余命予測:数日〜数週間
(急変時の死亡率100%)苦痛を与えない口腔ケアや体位調整が主軸となり、家族が最期の時間を穏やかに共有するフェーズ。
山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。