旅行コミュニティやSNS上では時折、「寒霞渓はドライブウェイが整備されているため、ロープウェイに乗らなくても山頂展望台に行けば同じ景色が見られる」という言説が散見されます。しかし、これは寒霞渓の地形構造を熟知していない典型的な誤解です。
寒霞渓の真髄は、約1300万年前の火山活動と地殻変動、そして気の遠くなるような浸食作用によって形成された険峻な岩壁群にあります。山頂の展望台から広角で見下ろす瀬戸内海と渓谷も圧巻ですが、それはあくまで「遠景」に過ぎません。これに対し、こううん駅乗り場から発車するゴンドラは、切り立った岩肌のわずか数十メートル横をかすめるように急勾配を上昇します。眼前に迫る「烏帽子岩」や「老杉洞」などの名奇岩を間近に見上げるスリルと立体感は、空中に張り巡らされた索道からでしか決して味わえません。
実際に現地を取材した旅行ライターや観光客のレビューを精査しても、「乗る前は運賃に躊躇したが、ゴンドラから見下ろす吸い込まれそうな谷底と大岩の迫力を体感し、乗らなければ後悔するところだった」という証言が圧倒的多数を占めています。移動手段ではなく「体験型アトラクション」として捉えることが、寒霞渓の満足度を決定づける分岐点となります。