検索エンジンで「八幡の藪知らず 事件」と打ち込む読者の多くは、「過去に迷い込んだ人間が忽然と姿を消した未解決事件があるのではないか」という戦慄の事実を想像しているかもしれません。市川市教育委員会の地域歴史資料や千葉県警察の過去の捜査記録、郷土史家の調査記録をどれほど洗い直しても、八幡の藪知らずの内部で人が忽然と姿を消した「神隠し事件」や変死体が発見された凶悪事件の公的記録は一切存在しません。
ネット上の掲示板や怪談まとめサイトで見られる「昭和中期に小学生が迷い込んで行方不明になった」「藪の中で発狂した男が保護された」といった話は、すべて民俗的な怪談に後から尾ひれがついた創作、いわゆるネットロア(ネット上の都市伝説)に過ぎません。
しかし、「警察が出動する事件」が全く起きていないわけではありません。実際に発生している事件の正体は、心霊スポット愛好家や再生数を稼ごうとする悪質な動画配信者による不法侵入事件です。
八幡の藪知らずは、近隣に鎮座する葛飾八幡宮が管理する私有地(飛地境内)です。周囲には高さのある白いフェンスが巡らされ、正面には「不知森神社」の石碑と鳥居、そして立ち入りを禁じる看板が明確に掲げられています。この柵を乗り越えて敷地内へ侵入する行為は、刑法第130条の「建造物等侵入罪」または軽犯罪法第1条32号の「入ることを禁じた場所内に正当な理由がなくて入った」罪に明白に抵触します。
現場は市川市役所の本庁舎が道路を挟んで目の前に位置し、昼夜を問わず人通りや車の往来が激しい市街地の中心部です。不審者がフェンスに手をかけたり内部に侵入しようとすれば、近隣住民や通行人によって即座に110番通報されます。地元所轄の市川警察署員が急行し、侵入者が厳重注意や任意の取り調べ、書類送検といった厳しい法的処置を受ける事例が実際に起きています。「神隠し」などではなく、「現代の法秩序を破った人間が警察に現行犯拘束される」という極めて現実的な事件こそが、この地で起きている騒動の正体です。