漢方薬といえば「数週間から数か月かけて体質をじっくり改善するもの」という固定観念を抱かれがちですが、小青竜湯に関してその常識は通用しません。東洋医学において小青竜湯は「急性期の病態を急激に鎮める頓服薬」としての性格を色濃く持っており、アレルギー性鼻炎や花粉症による水様鼻汁に対しては、服用後わずか15分から30分程度で鼻水が止まるという極めて高い即効性を発揮します。
その鍵を握るのが、漢方特有の「水毒(すいどく)」という病態概念です。冷えによって体内の水分代謝が滞り、余分な水分が上半身に溢れ出している状態を、乾姜や細辛が内臓から温めて蒸散させ、五味子が過剰な分泌を引き締め、麻黄と桂皮が体表から発散させることで速やかに解消します。
ただし、即効性を享受するには「症状の見極め」が極めて厳格に求められます。小青竜湯が劇的に奏功するのは、あくまで「無色透明で水のように垂れてくるサラサラした鼻水」と「激しいくしゃみ」に限られます。すでに鼻水が黄色くドロドロしている状態や、鼻腔粘膜が真っ赤に腫れ上がって熱を持っている「熱証」の段階で服用すると、生薬の温める作用が仇となり、炎症をかえって悪化させる危険性があります。