魔女の宅急便のパン屋は実在する?聖地モデルと公式再現の真相

魔女の宅急便のパン屋は実在する?聖地モデルと公式再現の真相

魔女の宅急便のパン屋は実在する?聖地モデルと公式再現の真相についての疑問解決ガイドをお届けします。

「魔女の宅急便 パン屋 モデル」を検索すると、必ずと言っていいほどスウェーデンとオーストラリアの2つの国がヒットします。なぜ異なる2つの国が候補に挙がるのか、そこには制作当時のロケハンの事実と、公開後のファンカルチャーが生んだ興味深い歴史が存在します。

公式が取材した本物の舞台:スウェーデン「ストックホルム」と「ヴィスビュー」

宮崎駿監督をはじめとするジブリ制作陣が、映画制作前の1988年に公式ロケハンを実施した場所は、北欧スウェーデンの首都ストックホルムと、バルト海に浮かぶゴットランド島の中心都市ヴィスビュー(Visby)です。

公式アートブック『THE ART OF THE KIKI'S DELIVERY SERVICE』や数々の関係者インタビューでも明言されている通り、魔女の宅急便のパン屋ロケ地およびコリコの街の原風景は、この中世の面影を色濃く残すヴィスビューの街並みから着想を得ています。石畳の小道、バラが咲き乱れる古い民家、石造りの頑丈な壁、オレンジ色の瓦屋根が連なるパノラマは、キキがほうきで空を飛んだときに見下ろした景色そのものです。

グーチョキパン店の外観に見られる、古風な木製のドアや石壁の質感、ショーウィンドウの格子窓も、ヴィスビュー旧市街に現存する伝統的な建造物が色濃く反映されています。

もうひとつの世界的な聖地:タスマニア「ロスベーカリー(Ross Bakery)」の真相

一方で、「グーチョキパン店のモデル」として世界中の旅人を引き寄せてやまないのが、オーストラリア南西部に位置するタスマニア州ロスにある「ロスベーカリー」です。19世紀から続く歴史あるレンガ造りのパン屋で、薪窯で焼かれる素朴なパンが名物となっています。

現地の証言や旅行記の調査によると、この店舗は映画制作陣が事前にロケハンに訪れた公式モデルではありません。映画公開後、バックパッカーや日本人旅行者の間で「映画に出てくるグーチョキパン店と薪窯の構造、そして屋根裏部屋の雰囲気が酷似している」とSNSや口コミを通じて評判が爆発的に拡散したのが始まりです。

店側もこの反響を温かく受け入れ、実際にキキが暮らしたような屋根裏部屋を「Kiki’s Room」として宿泊可能に整備。世界中のジブリファンが巡礼に訪れるようになり、現在では事実上の「公認聖地」として定着するに至りました。公式の制作背景としてのスウェーデンと、ファンの熱量によって聖地へと昇華したタスマニアという、2つの異なる文脈が存在しているのです。

山口 彩花
著者

山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。