2026年現在、歌舞伎座や各地の劇場街において、中村児太郎の名を見ない月はほとんどありません。古典の大役から新作歌舞伎、舞踊公演に至るまで、配役表の要所にその名が刻まれています。成駒屋の若き柱として、毎月の舞台に立ち続けるその姿には、かつての「期待の若手」という枠組みを完全に脱ぎ去った堂々たる風格が漂っています。
近年の歌舞伎座公演日程を追うと、児太郎の演じる役柄の幅広さに目を見張ります。『金閣寺』の雪姫、『本朝廿四孝』の八重垣姫といった女方の至宝とも呼ぶべき大役はもちろんのこと、人間の業や哀感を浮き彫りにする世話物の悪女や町娘まで、多彩な陰影を演じ分ける技術は各演劇誌でも絶賛の的です。
劇場の現場では、「立ち居振る舞いの美しさに加え、登場した瞬間に劇空間の空気を一変させる緊張感がある」との声が観客から数多く寄せられています。父・福助の療養以降、責任ある役どころを背負い続けて培われた舞台度胸は、同世代の役者陣の中でも頭ひとつ抜け出た輝きを放っています。