日本の飲食店では「ひき肉の甘辛バジル炒めご飯」を総称してガパオライスと呼ぶケースが一般的ですが、タイ現地の料理体系において「ガパオ(กะเพรา / krapao)」は植物名そのものを意味します。和名では「カミメボウキ」、英語圏では「ホーリーバジル」と呼ばれる神聖なハーブです。
私たちが普段口にしている料理をタイ語で正しく表現すると、「パット・ガパオ・ガイ(鶏肉のホーリーバジル炒め)」となります。「パット(炒める)」「ガパオ(ホーリーバジル)」「ガイ(鶏肉)」という構造であり、豚肉を使う場合は「パット・ガパオ・ムー」、牛肉なら「パット・ガパオ・ヌア」、シーフードなら「パット・ガパオ・タレー」と変化します。
つまり、タイ人にとって「ガパオ」という言葉は、料理のジャンルではなく主役となるハーブの指定です。日本で例えるなら、「ネギ抜きネギトロ丼」が存在し得ないのと同様に、ホーリーバジルが入っていない炒め物をガパオと呼ぶことは、本場では文化的にあり得ない認識のズレとなります。