「お酒を飲む前に牛乳を飲むと胃の粘膜に膜ができて酔いにくくなる」という説は、長年まことしやかに語り継がれてきました。しかし、医学的には「牛乳が胃壁をコーティングしてアルコールをブロックする」という現象は起こり得ません。
その決定的な理由は、アルコールの分子構造の小ささと胃の消化メカニズムにあります。水やエタノール(アルコール)の分子は極めて小さく、牛乳が形成するような一時的な液体の層を容易に通過して胃壁から吸収されます。さらに、牛乳が強酸性の胃液(胃酸)と混ざり合うと、主要タンパク質であるカゼインが瞬時に凝固して分離するため、胃の内壁全体を均一に覆い続けること自体が不可能です。
したがって、「牛乳を飲んだからどれだけ飲酒しても平気」と考えるのは危険な誤解と言えます。膜を張るという表現は、牛乳を飲んだ際のまろやかな口当たりや胃の痛みが和らぐ感覚から生まれた一種の都市伝説です。