ネット上の掲示板やSNSで「歯科技工士はやめとけ」と強い警告が発せられる背景には、個人の適性以前に業界全体が抱える極めて重篤な労働環境の問題が存在します。現場の技工士が辞めたいと感じる主な引き金は、大きく分けて以下の3点に集約されます。
第一に、拘束時間の長さと残業の常態化です。多くの個人経営・中小規模の歯科技工所では、歯科医院からの短納期発注に応えるため、深夜におよぶ残業や休日出勤が日常茶飯事となっています。納期に追われ、睡眠時間を削って石膏や金属、セラミックと向き合い続ける日々に「体力の限界」を訴える声は後を絶ちません。
第二に、労力に見合わない給料の低さです。新卒の手取り額が15万〜18万円前後に留まるケースも珍しくなく、残業代が固定残業代(みなし残業)として処理されている職場も散見されます。時給換算すると地域の最低賃金水準と同等、あるいはそれ以下になることもあり、これが強い不公平感を生んでいます。
第三に、身体への物理的負荷と健康リスクです。粉塵や有機溶剤を扱うことによる呼吸器への影響、微細な作業を一日中続けることによる深刻な眼精疲労や慢性的な首・肩・腰の痛みなど、長年働き続けるうえでの肉体的リスクが極めて高い点が挙げられます。