精神疾患の国際的な診断基準(DSM-5-TR)において、境界性パーソナリティ障害(BPD)は感情、対人関係、自己像の著しい不安定さと衝動性を特徴とします。臨床現場において女性の診断数が男性の約3倍に達する傾向が報告されており、特に近しい人間関係においてその特徴が顕著に現れます。
その行動パターンの根底にあるのが、病的とも言える見捨てられ不安です。相手が自分から離れていくことに対して極度の恐怖を抱き、現実の別れはもちろん、仕事の都合による返信の遅れや些細な態度の変化すら「拒絶された」「見捨てられた」と過敏に受け止めます。
これに伴って生じるのが、相手を「完璧な救済者」として崇める理想化と、一度の不満で「最低の人間」と見なす脱価値化の激しい揺れ動きです。心理学で「スプリッティング(白黒思考・全か無かの思考)」と呼ばれる防衛機制であり、中間的なグレーゾーンを受け入れられないため、関係性は常にジェットコースターのように乱高下します。