ネット上には「自動車がEV化すれば、エンジンを加工する工作機械メーカーは立ち行かなくなる」という短絡的な言説が散見されます。しかし、この見方は富山県南砺市 工作機械産業の実像を大きく見誤っています。なぜなら、同社は数年前から主力製品のポートフォリオを大胆にシフトさせているからです。
コマツNTCの製造品目の強みは、従来の内燃機関向けトランスファーマシン(専用自動加工ライン)にとどまりません。現在の主力展開は以下の4つの領域へと急速に拡大しています。
第1に、EVの基幹部品である「モーターハウジング」や「減速機ギア」、インバーターケースの超精密高能率マシニングセンタです。EV部品は軽量化のため薄肉アルミ素材が多く、熱変位を極小化しながら高速加工する高度な技術が求められます。福野工場が長年培った剛性の高い構造設計と超精密制御が、まさにここで真価を発揮しています。
第2に、世界屈指のシェアを誇る「クランクシャフト研削盤」です。ハイブリッド車(HEV/PHEV)の需要がグローバルで再評価されている現在、高効率エンジンのクランクシャフト加工にはミクロン単位の極限精度が不可欠であり、世界中の自動車大手が同社製マシンを指定採用し続けています。
第3に、半導体・電子材料分野向けの精密加工技術の再定義です。同社の業績推移を詳細に分析すると、自動車向け単一依存からの脱却が進んでおり、航空宇宙、ロボット向け減速機部品加工など、多軸複合化・知能化された高付加価値マシンへのシフトが営業利益率を押し上げている構造が確認できます。一時期の市況低迷を脱し、筋肉質な高収益体質へと脱皮を遂げている点が、ネットの噂では語られない決定的事実です。