同店を語るうえで外せないのが、注文を受けてから特製カスタードを絞り込む名物「クニャーネ」だ。ガラスケース越しに手渡される円筒形のパイ生地は、ひと噛みした瞬間、バリバリと激しい音を立てて砕け散る。焦げる寸前まで火を入れた香ばしい生地と、冷たく滑らかなクリームのコントラスト。一度体験すれば、遠方から買いに走る人々の心理が痛いほど理解できるはずだ。
一方で、玉木氏の真骨頂は力強いハード系パンにこそ宿る。ルヴァン種を巧みに操り、高加水でありながら内相は驚くほどみずみずしく、クラスト(外皮)は力強く香ばしい。噛みしめるほどに穀物の甘みが広がるバゲットや、季節の具材を惜しみなく詰め込んだ総菜パンの完成度は、他の追随を許さない。具材と生地の比率が限界を超えているにもかかわらず、破綻することなく一つの料理として昇華されている。