漫画表現と並行して記憶されるべきは、2004年に制作された実写映画『コンクリート』を巡る社会的騒動である。事件を題材にしたフィクション映画の公開が告知されるや否や、劇場への脅迫や激しい抗議活動が巻き起こり、上映館の変更やレイトショーのみへの縮小といった事態に追い込まれた。
この騒動は、漫画界における表現規制の議論にも決定的な影響を及ぼした。実在の被害者が存在する事件を商業メディアが扱う際、どこまでが「表現の自由」であり、どこからが「二次被害の加害」となるのか。映画公開を巡る激変は、実録系コミックを描く作家や編集部に対しても、より慎重な配慮と自己規制を強いる契機となったのである。