「歯並びの乱れがないにもかかわらず口元が突出する」という骨格の異常は、成長期の呼吸様式と密接に関わっています。その代表例が、アデノイド顔貌の特徴を備えた骨格形成です。幼少期に慢性的なアレルギー性鼻炎やアデノイド(咽頭扁桃)の肥大を患うと、無意識のうちに口呼吸が習慣化します。この口呼吸と舌の悪習癖改善がなされないまま成長期を過ごすことが、顔面骨格の形態に不可逆的な影響を及ぼします。
通常、安静時の舌は上顎の口蓋(スポットポジション)に吸着しており、上顎骨の正常な側方拡大を促す内圧として働きます。しかし、口呼吸を続けると舌は下顎の底に落ち込む「低位舌」となり、上顎の骨格は狭窄し、中顔面が縦に長く伸長します。その結果、下顎骨は前方へ成長できずに後下方へと回転(時計回り回転)し、典型的な下顎後退症のプロファイルが形成されるのです。
大人になってからこの問題に悩む当事者は、次のような身体的・外見的特徴を共通して抱えています。
- 安静時に唇が自然に閉じず、常に半開きになる
- 無理に口を閉じようとすると、顎先に「梅干し状のしわ」が強く刻まれる
- 下顎のラインが首と曖昧に繋がり、二重顎になりやすい
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)や慢性的な起床時の口渇感を伴う
こうした下顎後退症とオトガイ形成をめぐる問題は、単なる見た目の優劣にとどまりません。気道が狭窄することによる全身の酸素供給不足や、姿勢の悪化(頭部前方位姿勢)といった機能障害の引き金にもなるため、審美面と健康面の両輪から構造的なアプローチを講じる必要があります。