農林水産省や厚生労働省のガイドラインにおいて、マイナス18度以下の環境下では食中毒菌をはじめとする細菌や微生物の活動・増殖がほぼ完全に停止すると規定されています。理論上、菌が増えないという意味では「腐敗」しないため、海外の公的機関(米農務省・USDA等)の基準でも「冷凍状態が途切れず維持されていれば、理論上は長期間経過しても細菌学的な安全性は保たれる」と説明されています。
しかし、これはあくまで厳密な温度管理が維持された実験室レベルの前提です。一般的な家庭用冷凍庫は、日々の開閉によって庫内温度が頻繁にマイナス10度前後まで上昇します。温度変化が繰り返されることで肉内部の水分が氷結晶となり、昇華現象によって水分が抜け落ちる「乾燥」と、空気に触れ続けることによる「脂質の酸化」が容赦なく進行します。
時間の経過に伴う肉の状態変化は以下の通りです。
【賞味期限切れ・半年(6ヶ月)経過】
パック内やラップの内側に大量の霜が蓄積し、肉の表面が白っぽくカサつく「冷凍焼け」が顕著になります。肉自体のタンパク質が変性し、解凍時に旨味成分を含むドリップ(肉汁)が大量に流出します。食感はパサつき、特有の「冷凍庫臭(油の酸化臭)」が鼻につくようになりますが、十分に加熱すれば食中毒のリスク自体は比較的低いグレーゾーンです。
【賞味期限切れ・1年経過】
脂質の酸化が極限まで進み、過酸化脂質と呼ばれる有害物質が生成されます。過酸化脂質を多く含む劣化した肉を摂取すると、消化不良や激しい胃もたれ、胸やけを引き起こすリスクが高まります。繊維は完全に破壊されてゴムのような食感となり、調味しても異臭が消えないケースが多いため、安全面・品質面の両観点から喫食は推奨されません。