エンブレム本体が外れた直後のボディには、引き裂かれたスポンジと強固な粘着剤が黒い塊となって残存しています。ここからのアプローチを誤ると、爪やスクレーパーでクリア層に深い線傷を刻み込む事故につながります。
残った両面テープの剥がし方の基本は、親指の腹を使った「ローリング除去」です。ドライヤーで温めながら、端から指の腹で粘着剤をボディに対して平行に押し出すように丸めていくと、驚くほどポロポロと大きな塊ごと剥がれていきます。爪を立てる行為は厳禁です。広範囲に粘着剤が残ってしまった場合は、パーツクリーナーではなく、塗装面に対して攻撃性の極めて低いシール剥がし剤とシリコンオフを使用します。一般的なパーツクリーナーや強溶剤はクリア塗装を白濁・溶解させる危険があるため避けてください。溶剤をペーパータオルやティッシュに染み込ませ、残存した粘着剤の上に数分間密着させて「湿布」のように浸透させると、粘着基材がゼリー状にふやけ、マイクロファイバータオルで軽く撫でるだけで拭き取ることが可能になります。
テープを完全に除去した後に現れるのが、エンブレムの文字通りの輪郭がボディに残る「ゴースト現象」です。これは数年間にわたり紫外線や風雨に晒された周囲のクリア塗装が退色・劣化する一方、エンブレムで覆われていた部分だけが新車時の状態を保っていたことによる「日焼けの段差」および輪郭周りの硬化水垢です。
この境界線を目立たなくするためには、コンパウンドによる日焼け跡の研磨を実施します。粒子の粗い研磨剤を使うと周囲の塗装を過剰に削ってしまうため、まずは「極細目(仕上げ用)」の液体コンパウンドをマイクロファイバークロスに少量取り、指先で優しく円を描くように磨き込みます。段差が頑固な場合のみ「細目」から順を追って番手を上げ、最後は超微粒子コンパウンドで鏡面に整えます。仕上げにガラスコーティング剤や固形ワックスを塗布すれば、光の乱反射が収まり、エンブレムの痕跡は完全に周囲の塗装と同化します。