本作のクライマックスで明かされる結末は、単なる因果応報の域を遥かに超えた精神的破壊の極致です。少年A(渡辺修哉)は、自らの存在を世間に知らしめ、家を出ていった母親の関心を惹きつけるため、全校生徒が集まる体育館に爆弾を仕掛けて自爆テロを企てます。携帯電話の通話ボタンを押せば体育館全体が吹き飛ぶ手はずを整え、修哉は壇上で勝ち誇った笑みを浮かべながら起爆スイッチを押しました。
しかし、爆発音は体育館には響きませんでした。直後、鳴り響いた修哉の携帯電話を取ると、そこにいたのは復讐の執行人・森口悠子でした。森口は体育館の演説台の下に隠されていた爆弾をあらかじめ解除し、「ある場所」へと移設していたのです。その移設先こそ、修哉が命よりも執着し、再会と認知を渇望し続けていた実母の研究室でした。
森口悠子は、修哉が起爆スイッチを押す直前に母が研究室にいる事実を確認していました。つまり、修哉は「自分の手で最愛の母親を爆殺した」ことになります。森口が仕掛けた周到な伏線回収の流れを整理すると、以下の通りです。
第一に、修哉の「自作の発明品への過信」です。彼は自らが開発した財布型防犯ブザーや電気ショック装置に絶対の自信を持っていましたが、森口はその設計思想と起爆システムを完全に把握し、逆利用しました。第二に、修哉が母親に送っていた執拗な手紙と、母がすでに再婚して新たな命を宿していたという過酷な現実です。修哉の母は息子への未練など持っておらず、新しい家庭で幸福に暮らしていたという事実を突きつけることで、少年の存在意義そのものを粉砕しました。
そして最も強烈な余韻を残すのが、泣き叫び絶望する修哉に対し、森口が言い放つ最後のセリフです。
「ここからあなたの更生が始まるのよ……なーんてね」
このラストシーンの意味は明白です。教育者が口にする「更生」「命の大切さ」といった綺麗事を森口自身が完全な嘘・嘲笑として切り捨て、修哉に一生消えない地獄を刻み込んだ瞬間でした。殺害という直接的な死を与えるのではなく、「生きながらにして最愛の者を自らの手で殺したという業」を背負わせることこそが、森口が完遂した究極の復讐の真相でした。