もし触診を試みて振動が一切感じられず、耳を当てても全く音が聴こえない「スリル消失」が確認された場合、シャント血管はすでに血栓によって完全に閉塞している可能性が濃厚です。この局面に直面した際のシャントスリル消失緊急対処は、迷わず数時間以内に医療機関へ連絡を入れることです。
ここで絶対に避けるべきNG行動があります。それは、「血行を良くしようとしてシャント部を温める」「血栓を流そうとして強く揉む・マッサージする」という自己流の処置です。閉塞した血管を無理にマッサージすると、血管壁に張り付いた血栓が千切れて中枢側の肺血管へ飛び、致死的な肺塞栓症を引き起こすリスクがあります。また、温熱処置によって局所の炎症が悪化する場合もあります。
「明日は透析日だからその時に相談しよう」という先送りは致命傷になります。シャント閉塞は発症からの時間経過が治療成績を左右します。閉塞からおおむね24〜48時間以内であれば、カテーテルを用いて血管内部の血栓を吸引・溶解しながら風船(バルーン)で血管を押し広げるシャントPTA血管拡張術(経皮的血管形成術)によって、メスを入れずに血管を再開通させることが可能です。
しかし、完全閉塞から日数が経過してしまうと血栓が器質化(血管壁に固着して硬化)し、カテーテル治療での回復が極めて困難になります。その結果、反対側の腕や別の部位に新たな内シャントを一から造設し直す再手術が必要となり、透析を繋ぐために一時的な首や足の付け根へのカテーテル留置(長期留置型透析用カテーテルなど)を強いられるなど、患者の身体的・精神的負担は跳ね上がります。