増税論議が過熱する一方で、SNSを中心に出回っている不正確な情報や誤解についても冷静に事実関係を整理する必要があります。
第1の誤解は、「政府がすでに閣議決定で12%への引き上げを裏で決定した」という言説です。日本の法制上、税率の変更には税制改正法案の国会提出と審議・可決が不可欠であり、内閣の密室判断だけで増税が決定されることは制度的にあり得ません。
第2の誤解は、「消費税収はすべて大企業の減税穴埋めに消えている」という極端な言説です。法的には、消費税の使途は社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化対策)に限定されています。ただし、国債発行の抑制や一般会計全体のバランスの中で、税収増が他の減税施策と相殺されているように見える側面があることは事実であり、これが国民の不信感を生む温床となっています。
第3の盲点は、複数税率がさらに複雑化するリスクです。仮に標準税率が12%になった場合、軽減税率が「8%据え置き」「10%へ引き上げ」「品目ごとの再編」のいずれになるかによって、小売現場のPOSレジ改修やインボイス発行システムへの負荷は天文学的に増大します。単なる税率の問題にとどまらず、社会全体の事務コストを押し上げる点が過小評価されています。