ネット上に氾濫する医療情報の中には、傷口の悪化を決定づける危険な民間療法や誤解が紛れ込んでいます。取材を通じて判明した代表的な3つの誤解を是正します。
第1の誤解は、「出血を止めるために即座に絆創膏やキズパワーパッド等の密閉型ハイドロコロイド絆創膏を貼る」という行為です。これは猫咬傷において最も避けるべき処置です。密閉型ドレッシング材は、傷口の浸潤環境を保つことで治癒を促す製品ですが、細菌が深部に残った状態で密閉すれば、嫌気性菌にとっての完璧な培養器を作り出すことになります。創部がパンパンに腫れ上がり、排膿が妨げられて筋膜下へ膿が波及する直接の原因となります。
第2の誤解は、「強いアルコールや赤チン、オキシドールなどの消毒薬を創部に流し込む」ことです。現在の手術創・外傷診療ガイドラインでは、細胞毒性のある消毒薬を深部創に注ぎ込む処置は推奨されていません。健常な肉芽組織や免疫細胞を痛め、かえって感染防御能を低下させるためです。
第3の誤解は、「受傷した直後は痛くないから感染していない」という思い込みです。パスツレラ菌などの増殖には一定の培養時間を要するため、刺された直後よりも6〜12時間後から爆発的な炎症が起こります。「痛くなってから病院を探す」のでは、すでに組織破壊が進行しており、点滴入院や切開が必要な段階へ至ってしまいます。