ダ・カーポの『野に咲く花のように』を語る上で欠かせないのが、1980年から長年にわたり放映されたテレビドラマシリーズ『裸の大将放浪記』の存在です。日本中を旅しながらちぎり絵(貼絵)で圧倒的な傑作を残した天才画家・山下清さんをモデルにしたこのドラマで、芦屋雁之助さんが演じる主人公・清の背中に流れていたのがこの曲でした。
作曲を担当した小林亜星さんは、昭和を代表するヒットメーカーであり、CMソングからアニメ主題歌、演歌まで幅広い名曲を手掛けた音楽の巨人です。関係者の証言や当時の制作秘話によると、小林さんは「飾らない清の純真無垢な心」と「日本の原風景」をひとつの旋律に落とし込むため、徹底して音数を削ぎ落とし、誰もが口ずさめる親しみやすいメロディラインを構築しました。
山下清さんは知的障害を持ちながらも、世俗的な欲望や世間体に一切囚われず、ただ心の赴くままにおにぎりを貰い、美しい風景を記憶に焼き付けて貼絵に昇華させました。その生き様はまさに「誰に見せるためでもなく咲く野の花」そのものです。小林亜星さんの温かくどこか切ないメロディと、ダ・カーポの清涼感あふれるハーモニーが融合したことで、ドラマの枠を超えた国民的スタンダードナンバーへと成長を遂げました。