おちかラーメンが九州の麺食文化において特異な地位を占めていた最大の理由は、いわゆる一般的な熊本ラーメンの王道とも、博多や久留米の豚骨とも一線を画す圧倒的なスープの重厚さにありました。
一般的な熊本ラーメンといえば、豚骨と鶏ガラをブレンドした比較的マイルドな白湯に、香ばしいマー油(焦がしニンニク油)を浮かべるスタイルが主流です。しかし、おちかラーメンが提供していたのは、骨の髄まで炊き出したドロリとした粘度を持つ純度極限の豚骨スープでした。丼の縁ギリギリまで注がれた熱々のスープには分厚い脂の膜が張り、湯気すら立ち上らないほど高密度に封じ込められていたのです。
常連客の手記や実食記録によると、一口すすった瞬間に押し寄せる強烈な骨の旨味と、容赦なく効かせた生ニンニク・揚げニンニクのパンチ力は「一度食べたら1週間はその残香が脳裏から離れない」と形容されるほどでした。中太でコシのあるストレート麺に絡みつくスープ、甘辛く煮込まれた大ぶりなチャーシュー。山あいの小さな町でありながら、週末ともなれば県外ナンバーの車やツーリングのバイクが長蛇の列を作り、2時間待ちも珍しくありませんでした。アクセスはお世辞にも良いとは言えない立地でありながら、この味だけを目的に人々が押し寄せた事実こそが、この店の規格外の実力を証明しています。