インターネット上や日常会話において、聴覚障害と手話コミュニケーションに関しては今なお多くの誤解が蔓延しています。現場で当事者と接する際、知らず知らずのうちに相手を困惑させないための3つの盲点を紐解きます。
盲点1:手話は「世界共通言語」ではない
「手話は身振り手振りだから世界中で通じる」という思い込みは完全な誤認です。手話は自然発生した独自の言語体系であり、国や地域によって文法も単語も全く異なります。日本の「日本手話」、米国の「ASL(アメリカ手話)」、英国の「BSL(イギリス手話)」は互いに外国語の関係にあり、アメリカとイギリスですら手話の体系は大きく異なります。
盲点2:「日本手話」と「日本語対応手話」はまったくの別物
日本で使われる手話には、大きく分けて2つの潮流があります。「日本手話」は音声言語の日本語とは文法規則が異なり、空間の使い方や眉・目・あごの動き(文法機能を持つ非手指標識)を駆使する独立した自然言語です。一方、「日本語対応手話」は日本語の文法順序に合わせて手話の単語を当てはめていくもので、中途失聴者や難聴者が日本語を補助するために用いるケースが多く見られます。前者を母語とするろう者に日本語対応手話で話しかけても、ニュアンスが正確に伝わらないことがあります。
盲点3:「補聴器や人工内耳をつければ元通りに聞こえる」という幻想
眼鏡をかければ視力が1.0に矯正されるのとは異なり、補聴器や人工内耳は「音をマイクで増幅・電気信号に変換して脳に届ける機械」です。周囲の雑音や金属音も一緒に増幅されるため、騒がしい場所では特定の人の声だけを聞き分けることが極めて困難になります。外見からは普通に聞こえているように見えても、脳内で激しい情報処理を行っており、当事者は膨大な精神的疲労(リスニング・エフォート)を強いられています。