1980年代後半から1990年代にかけて、お茶の間を釘付けにしたのがフジテレビ系列の看板特番だった。『ものまね王座決定戦』や『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦』は、まさにバラエティ番組の最高峰として君臨し、30%を超える驚異的な視聴率を連発していた時代だ。スタジオには異様な緊張感と熱気が満ち、演者たちは一世一代の勝負に命を削っていた。
当時のシーンを牽引していたのは、誰もが知る清水アキラやコロッケといった猛者たちだ。彼らが過激なデフォルメや身体を張ったギャグで笑いの渦を巻き起こすなか、岩本が貫いたのは徹底した「本格派の歌まね」だった。布施明の雄大なビブラート、郷ひろみの華やかなハイトーン、前川清の哀愁漂う節回し。目を閉じれば本人がそこに立っていると錯覚するほどの精度は、ものまねの概念そのものを芸術の域へと押し上げた。