草津温泉の季の庭を検討する旅行者が、予約直前あるいは現地到着後に最も驚く事実が「客室露天風呂は温泉ではない」という点です。インターネット上の検索でも「季の庭 客室露天風呂 温泉じゃない」というワードが多く検索されていますが、これは単なる噂ではなく施設の正式な仕様です。
「草津温泉の高級宿で全室露天風呂付き」と聞けば、当然のように客室のお風呂にも草津の名湯が注がれていると思い込みがちです。しかし、客室テラスに設置された浴槽に張られているのは、肌当たりの柔らかな「白湯(沸かし湯)」となっています。
この仕様が採用されている背景には、草津温泉特有の強力な泉質事情が存在します。草津の湯はpH2前後の強酸性であり、金属を激しく腐食させる性質を持ちます。仮に全64室の客室露天風呂へ直接温泉を引き込めば、給配管の急速な劣化やバルブ類の故障が頻発し、客室内での硫化水素ガス滞留といった安全管理上のリスクも格段に跳ね上がります。建築設備の保全と宿泊者の安全確保を両立させるための必然的な設計判断といえます。
一方で、草津温泉における季の庭の大浴場の泉質は極めて贅沢です。館内大浴場「季の湯」および「古の湯」には、草津でも希少な「わたの湯」と「湯川の湯」という2種類の異なる源泉が惜しみなく引かれています。特に「わたの湯」は真綿のように柔らかな肌触りと乳白色の濁り湯が特徴で、湯守の手によって最高の鮮度に保たれています。
「客室の露天風呂は、景色や外気を感じながらプライベートな空間で長湯を楽しむための浴槽」「強酸性の本格的な草津の名湯は、大浴場や3つの無料貸切露天風呂(岩室・竹座・光林)でじっくり堪能する」という役割分担を理解しておくことが、現地での落胆を防ぐ最大のポイントです。