老舗ブランドが直面する最も過酷な試練は、長年の愛用者による品質へのシビアな視線です。特に2024年に発表された看板シリーズ「TANKER」の素材刷新(東レとの共同開発による100%植物由来ナイロン『エコディア N510』への移行)と、それに伴う定価の大幅な見直しは、愛好家コミュニティに大きな波紋を広げました。
SNSや専門掲示板、大手レビューサイトに寄せられた愛用者の生の声を分析すると、評価は明確に二分されています。
「30年前に買った初代タンカーが今も現役。新型を店舗で手にとってみたが、手触りのしなやかさと光沢感は以前と全く変わらず、むしろ細部の金具やステッチの精度が上がっている。国内の職人を守るための価格改定なら納得して払える」(40代・男性ビジネスパーソン)
「学生時代は1万円台後半から2万円台で買えた名作ウエストバッグやデイパックが、今や4万〜6万円台に突入してしまい、若者が気軽にエントリーできるブランドではなくなった。製品の素晴らしさは認めるが、手が届きにくい高級品になってしまった寂しさがある」(30代・男性フリーランス)
現場取材で見えてくるのは、原材料費の高騰や円安といった外的要因だけでなく、「国内の下請け縫製工場と職人に対して適切な工賃を支払い、技術の断絶を防ぐ」という吉田カバンの不退転の決意です。安易に生産拠点を海外へ移転して低価格を維持する道を選ばず、適正価格で販売して国内の職人エコシステムを守り抜く姿勢は、長期的視点で見ればブランドのコアバリューを強烈に押し上げています。