伊勢佐木町の歴史を語るうえで欠かせないのが、横浜を象徴する音楽文化との深い結びつきです。1968年に大ヒットを記録した青江三奈さんの名曲「伊勢佐木町ブルース」ゆかりの地として知られ、イセザキ・モール2丁目には記念歌碑が設置されています。碑に埋め込まれたスイッチを押すと、往年の艶やかな歌声が通りに響き渡る仕掛けは、今も多くの観光客が足を止める名物スポットです。
そして平成から現在に至るまで、伊勢佐木町を語る最大のカルチャーアイコンといえば、フォークデュオ「ゆず」の聖地としての顔でしょう。かつて伊勢佐木町1丁目にあった老舗百貨店「横浜松坂屋」(現在は商業施設『カトレヤプラザ伊勢佐木』)の軒下で、北川悠仁さんと岩沢厚治さんが毎週水曜日に路上ライブを重ねていた逸話は伝説として語り継がれています。
1998年8月30日、デビュー直前に行われた最後の路上ライブには、歩行者天国を埋め尽くす約7,000人ものファンが押し寄せ、警察の出動要請によって途中で演奏が中止されるほどの社会現象となりました。カトレヤプラザ伊勢佐木の外壁には、現在もゆずの軌跡を称える記念レリーフが掲げられており、全国から聖地巡礼に訪れるファンが途切れません。昭和歌謡の哀愁と、平成ポップカルチャーの熱気。この重層的な歴史の厚みが、単なる新興商業地には出せない伊勢佐木町ならではの独特な色気を生み出しています。