健康意識の高い人が陥りやすい重大な誤解が、「便秘にはとにかく食物繊維と刺激性下剤」という画一的な思い込みです。病態を見誤ったセルフケアは、症状をかえって悪化させる危険な罠となります。
代表例が、大腸が過剰に緊張しているけいれん性便秘治し方における食物繊維の選択ミスです。食物繊維には水に溶けない「不溶性(ゴボウ、玄米、豆類など)」と水に溶ける「水溶性(海藻、オクラ、ペクチンなど)」があります。腸が過敏に収縮している状態で不溶性食物繊維を大量に摂取すると、便の嵩(かさ)が増えすぎて狭くなった腸管を刺激し、激しい腹痛やガス溜まりを一層悪化させます。このタイプに必要なのは、便を柔らかく滑らかにする水溶性食物繊維や、マグネシウムなどの浸透圧性緩下薬です。
さらに警戒すべきは、センナや大黄、ビサコジルなどを主成分とする「刺激性下剤」の乱用です。薬局で手軽に入手できる反面、連用すると腸の神経叢(アウエルバッハ神経叢)が変性・疲弊し、大腸メラノーシス(大腸黒皮症)を引き起こします。結果として「薬を飲まないと全く動かない無力な腸」を作り出してしまうため、刺激性下剤は週1〜2回以下の頓用にとどめるのが消化器領域の国際的な標準見解です。