この病理の残酷さを世界中に知らしめたのが、アメリカで起きた実際の事件だ。母親のディー・ディー・ブランチャードは、娘のジプシー・ローズ・ブランチャードが白血病や筋ジストロフィーなどの重病を抱えていると偽り続けた。娘の髪を剃り落とし、車椅子生活を強要し、不要な投薬と手術を重ねさせたのである。
世間はディー・ディーを「病の娘を健気に育てる聖母」と称賛した。しかし、成長したジプシー・ローズが自らの身体の真実に気づいた時、物語は血塗られた結末を迎える。極限の支配から逃れるため、彼女は交際相手とともに実母の殺害に及んだ。
センセーショナルな海外のトゥルー・クライムとして現在も語り継がれるこの症例は、加害者の歪んだ愛が被害者の人生をどれほど徹底的に破壊するかを浮き彫りにした。支配と捏造の果てに待っていたのは、家族の崩壊という最悪の結末だった。