悲鳴嶼行冥を語る上で避けて通れないのが、彼の過去だ。かつて身寄りのない子供たちを寺で育てていた彼は、ある夜、一人の子供の裏切りによって鬼の襲撃を受ける。目が見えないながらも、残された幼い少女・沙代を守るために夜明けまで鬼の頭を殴り続けた。しかし、生き残った沙代の混乱した証言により、彼は「子供たちを殺した犯人」として投獄されてしまう。
このあまりにも理不尽な裏切りが、彼の人間不信の根源となった。彼は人間を信じない。特に子供という存在の脆さと残酷さを誰よりも知っている。それでもなお、彼は鬼殺隊に入り、人々を守るために戦う道を選んだ。この「信じられないものを、それでも守る」という矛盾を抱えた葛藤こそが、彼のキャラクターに深みを与えている。単なる正義の味方ではない。傷だらけの心が紡ぎ出す優しさだからこそ、私たちの胸を打つのだ。