なぜ私たちは、自分が生まれ育った家でもないのに「おばあの家」に足を踏み入れた瞬間、強烈な懐かしさと安心感を抱くのでしょうか。この心理メカニズムは、環境心理学や社会学の観点から論理的に説明がつきます。
心理学には、過去の肯定的感情を想起することで孤独感やストレスを軽減させる「ノスタルジアの心理的補償効果」という概念があります。木材の木目や障子越しに差し込む柔らかな自然光、畳の吸音効果によって生み出される静寂、自然の風の通り道といった要素は、人間の副交感神経を優位にし、原始的な安心感(生体的な居心地の良さ)をもたらします。
さらに、家族社会学的に見れば、戦後日本の核家族化と都市化が進むなかで失われた「大家族の無償の受容空間」に対する集合的無意識の憧憬が投影されています。損益計算や社会的評価に縛られる日常から解放され、「ただそこにいるだけで許される場」としてのサードプレイスを、人々は「おばあの家」に見出しているのです。