丸善という屋号は、日本近代文学の歴史と切っても切り離せない。教科書でも名高い梶井基次郎の短編小説『檸檬』。主人公が京都の丸善の画集の上に黄色いレモンを爆弾に見立てて残し、立ち去るというあの有名なシーンは、愛書家たちの心に深く刻まれている。
その文化的記憶は、現代の丸の内本店にもしっかりと受け継がれている。文具売り場やカフェでは作品にちなんだレモンモチーフのスイーツやオリジナルグッズが展開され、文学ファンの密かな巡礼地となっている。明治の文明開化期から昭和のモダニズム、そして現代へと続く知の系譜。ここには、流行を追うだけの量販店には決して真似できない「物語」が息づいている。