「都立家政」という一風変わった駅名に興味を持つ人は少なくありません。全国的にも「学校の科目名(家政)」がそのまま駅名として定着している例は極めて珍しく、そこには昭和初期の地域住民の熱意と歴史的背景が刻まれています。
歴史の発端は昭和12年(1937年)に遡ります。現在の駅北側エリアに「東京府立中野高等家政女学校」(現・東京都立鷺宮高等学校)が移転・開校しました。当時、西武鉄道の駅はまだ設置されておらず、生徒の通学や地域住民の利便性向上のため、新駅の開設を求める強い請願運動が巻き起こりました。
地域住民や学校関係者が敷地や費用を工面し、地元主導の「請願駅」として昭和12年11月に開業したのが「府立家政駅」です。その後、東京都制の施行(昭和18年)に伴い「都立家政駅」へと改称され、現在に至るまでその名称が受け継がれています。
学校自体は「鷺宮高校」へと校名を変えましたが、駅名と商店街には「家政」の名が残り続けました。街の成り立ちそのものが住民の連帯によって生まれた歴史を持つからこそ、都立家政には今なお温かな地域コミュニティの絆が息づいているのです。