インターネットの検索窓で寺院名を打ち込むと「枯れた」「咲かない」といった不穏な関連語が見受けられます。この噂の発端は、平成中期から後期にかけて相次いだ台風の直撃や、主幹の内部腐朽による枝折れ事故、さらには土壌踏み固めによる根の呼吸不全など、深刻な樹勢の衰退期があったことに起因します。
一時期は最上部の主要な大枝が枯死し、かつての巨大な樹冠を知る古くからのファンから「もう昔の姿は見られないのではないか」と惜しまれました。しかし、ここで終わらなかったのが紹太寺のしだれ桜です。
樹木医を中心とした専門家チームと地元保存会、寺院関係者が結束し、以下のような大規模な再生プロジェクトが長年にわたり粘り強く行われました。
- 土壌環境の抜本的改善:固く締まった周囲の土を掘り起こし、有機肥料と木炭を漉き込んで通気性と保水性を回復。
- 不定根(ふていこん)の発根誘導:腐朽した幹の内部に保護剤を施し、健康な上部から新たな根を地面へと誘導する高度な治療を実施。
- 根系保護デッキの設置:見物客による根元の踏み込みを防ぐため、立ち入り禁止区域の設定と保護柵・木道の整備。
- 後継樹・ひこばえの育成:親木のDNAを継承するひこばえ(根元から生える若芽)を丁寧に剪定・保護。
こうした十数年に及ぶ手厚い看護が実を結び、老木は再び旺盛な萌芽力を取り戻しました。全盛期の巨体とは形を変えたものの、幾多の苦難を乗り越えて咲き誇るその姿は、「奇跡の一本桜」として今なお深い感動を与え続けています。