飾らない言葉で人間の本質を突く代表作『にんげんだもの』。この作品をはじめとする彼のスタイルは、いかにして誕生したのか。その根底には、伝統的な書道の技巧を極めた上で辿り着いた「自分の言葉を、自分の書で表現する」という揺るぎない覚悟があった。
若い頃の彼は古典的な書法を完璧に修得していた。しかし、白樺派の文豪・武者小路実篤の自由な精神や人間愛に深く傾倒し、言葉と書が一体となった詩画の世界へと傾斜していく。専門家しか読めない高尚な現代書道ではなく、子供からお年寄りまで誰もが読める書。それこそが、彼が到達した独自の境地だった。