東欧の架空の小国「クラコウジア」からニューヨークへ降り立ったビクター・ナボルスキー。しかし入国審査の直前、祖国で軍事クーデターが勃発したことで国家が事実上消滅し、彼のパスポートは一瞬にして効力を失ってしまいます。合衆国への入国もかなわず、母国への送還もできない――宙ぶらりんの「法的に存在しない人間」となった彼は、空港ターミナルの国際線乗り継ぎロビーから一歩も出られない異常事態に陥りました。
空港警備局の主任フランク・ディクソンは、昇進の邪魔になるビクターを追い出そうとあらゆる嫌がらせを仕掛けます。食事のクーポンを没収され、言葉の壁にも阻まれながら、ビクターはカート回収のデポジットで小銭を稼ぎ、建設作業の腕前を認められて空港内の内装工事チームに雇われるなど、持ち前の誠実さと器用さで環境に適応していきました。やがて清掃員グプタやケータリング係のエンリケ、そして不倫の恋に苦しむ客室乗務員アメリア(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)ら、空港で働く仲間たちとの間に温かな絆が芽生え始めます。
映画の結末における真相は、ビクターの純粋な意志の勝利でした。クラコウジアの内戦が終結して帰国が可能になった日、ディクソン主任はビクターの仲間たちの弱みを握り、ニューヨークへ一歩も出ずに帰国するよう脅迫します。しかし、仲間たちは自らの不利益を顧みずビクターの背中を押し、空港職員や警備員までもがディクソンの命令に背いて彼を見送りました。降りしきる雪の中、ついにマンハッタンの地を踏んだビクターは目的を果たし、迎えたイエローキャブに乗り込んで「家へ帰る」と告げます。恋愛関係の成就という安易な着地を選ばず、約束を果たして故郷へ帰る男の背中を描いたラストシーンは、観客に深い余韻を残しました。